パン作りで1番気に入ったところは、発酵後のほかほかでまるまるツヤツヤとした生地が出来上がるところだった。
まるで我が子のように可愛く感じ、自然と笑顔で「うわあ〜!」と喜びの声が口から出た。感触もしっとりしていて、ずっと触っていたくなる。
指を刺してガス抜きをして萎んでいく姿は少し寂しかったが、オーブンで焼き上がったときの香りを嗅ぐと、とても幸せな気持ちになった。
焼きたてはやはり非常に美味しい。
しかし、発酵後の生地と対面するあの瞬間には勝らない。発酵後の生地は我が子だが、焼成後のパンは他人のように感じる。
パンは焼いたら食べなければならない。
やがて食べきれず冷凍したパンを消費するスピードより、発酵後の生地に会うスパンの方が早くなっていき、生地の作成を控えるようになっていった。